【Jim Wendler’s 5/3/1】12週 ピーキングプログラム Part 1/4

TRDB531

Beyond 5/3/1」に紹介されていたStrength Challengeの紹介で、4パートある内の1つ目になる。以前どこかでWendlerが「5/3/1 for Powerlifting」と言うパワーリフティング用(ギア、ノンギア用に)の本を出していた事を紹介したが、今ではこの本の内容よりも、「Beyond 5/3/1」にあるStrength Challengeのを、個々のニーズや重点目標に合わせて調整したものをパワリフのピーキング・トレーニング・サイクルとして使われている。4パートにしたのはコンセプトの説明等を含めると、かなり長くなってしまうからだ。中途半端に説明すると意味が分からなくなるし、しっかり説明すると無駄に長くなるので、ある程度のかじっただけの説明になっているが申し訳ない。

本ピーキングサイクルは週4日のトレーニングと3日のコンディショニングをベースに3ヶ月であり、1ヶ月目はボリュームと基礎体力、2ヶ月目は強度、スピード、基礎体力、3ヶ月目はテーパリング、そして試技と言う3つのトレーニングブロックから構成されている、ごく一般的な3ヶ月のピーキングピリオダイゼーションのモデルだ。投稿自体はピーキングをした事ない人向けの内容となっている。パワーリフティングが中心点では無いが、より簡潔にしっかりした日本語で書かれている情報が得たい方は是非、是非、是非Athletebody.jpさんの所でメールアドレスを登録して(ページの↓の方)、無料公開している肉体改造のピラミッド~トレーニング編~を熟読して頂きたい。

※沖縄県の第41回沖縄県パワーリフティング選手権大会が4月10日(日)となっている。ここで紹介するプログラムを1月18日(月)から開始すれば間に合う。考察や準備が出来るように1月6日までには最初の4週分(Part2/4)を投稿する予定である。

この投稿は4部構成の内の一つ目で、今回は概念や用語の説明がメインだ。実際のプログラムはPart 2/4以降となる。

CEU Quizの関連記事として紹介されていたレビューのNSCA Japanによる和訳の要約が↓(1)

ピリオダイゼーションは、体系的なストレングス&コンディショニングプログラムを作成するための最適な方法である。ただし、選択した方法が、アスリートのレベルと競技シーズンの制約に基づいている必要がある。すべてのピリオダイゼーションプロトコルに必要とされる共通の課題は、量 (volume)-負荷 (intensity) の調整一般的なトレーニング (General Physical Training) から競技特異的トレーニング (Sport Specific Physical Training) への漸進 (Progression)、そして疲労 (Fatigue) の解消である。特に疲労の解消に重要なこととして、試合前のテーパリング (Tapering) が有益であると思われる。

そもそもピーキングとは?

自分で説明しなくて良い様にあちらこちら探したが、上手く解説しているサイトが見当たらなかったので、軽く説明する。

Fitness-Fatigue Model

先ず、フィットネス―疲労理論(河森さんの考察。真ん中ら辺に簡潔に書いてある)と言うのがある前提で話を進める。表にしたら以下の通りになる。
FFmodel JP
Athletebody.jpの用語と統一すべく、「準備態勢」は「パフォーマンス」に訳語を変えましたが、図は「準備態勢」の奴のままです。
NSCA Japanはpreparednessを準備(状態)、fitnessを体力と訳しています。

概要は河森コーチの所で理解出来たと思うが、もう一つ例えてみよう。
バーベルスクワットを5レップ x 5セットを75%でこなした後に3km走ってまた同じメニューの5×5バーベルスクワットをしようとしたら凄く難しく、下手したら完遂する事すら出来ない。この場合はフィットネスが減少したわけではなく、疲労によってフィットネスが相殺されていると言う事だ。
フィットネスと疲労の相殺具合によってパフォーマンス(河森コーチが言う様にパフォーマンスには外的要因が絡んで来るので狭義に言うとしっくりこない)が決まって来る、みたいな見方で良いと思う。パフォーマンスは英語のPreparednessを直訳したものだが、他には「体力レベル」や「準備(状態)」と言った訳した方もされいてる。先ほどの例は1セッション規模であったが、フィットネスと疲労の関係はもっと時間が掛かって元に戻って行くもので、特に高強度トレをしているのなら中央神経系の回復が必要で数週間掛かる。数日前まで普通にトレーニングしていて、そこから2、3日置いてPRに挑戦しても、ビギナーでない限りパフォーマンスは最善状態になっていないので、PR更新の結果は理論上はたかが知れたものとなる。年末のツイッターのトレクラスタ勢も年内目標のPRに挑戦して一喜一憂していたが、しっかりピーキングしていれば出来たケースもあったかも知れない。

トレをするとフィットネスが上がるが、疲労が貯まる。これをバランス良くVolume(ボリューム、トレの合計量)、Intensity(強度、トレで扱う重量)、Frequency(頻度、トレ回数)で調整して行くのがプログラム。疲労を手っ取り早く無くすには何もせずオフを取る事だが、さすればDetrainingが発生し、フィットネスがガクっと落ちてしまう。だから、試合当日に疲労が解消されつつもフィットネスを保持し、パフォーマンスがマックスになる様に微調整して行くのがピーキングサイクルだ。

ピーキングの目的

  1. 疲労を出来るだけ無くす 
  2. フィットネスを維持、あわよくば上げる 
  3. ビッグ3で最大限の力が発揮出来る様に、特異性の強化

用語の説明

  • ピリオダイゼーション (periodization): 運動能力の強化および疲労と適応の管理を通してピークパフォーマンスをもたらすトレーニング計画 (2)
  • ピーキング (peaking): 特定の時間にパフォーマンスが最大限になる様に持って行くこと。英語でピークは頂点を意味する。パワリフにおける特定の時間とは試合当日の事。
  • パフォーマンス (preparedness): フィットネスと疲労の和;どれだけパフォーマンスを発揮出来るか。
  • フィットネス (fitness): 高重量を扱う為にトレーニングで鍛え上げた身体的、及び精神的な+のパラメータ
  • 疲労 (fatigue): 身体のボロボロ具合でもあるし、パフォーマンスにも影響する-のパラメータ
  • テーパリング (tapering): 最大出力の為にボリュームと強度を下げる事で、トレーニングによって蓄積した疲労を解消して無くして行くこと。英語でテーパーは先細りになること。
  • 特異性 (specificity): あるタスクをこなす練度、パワリフの場合、1RMを出す練度。「強い」だけでは意味がなく、試合に近付くにつれ重要になってくる。
  • オーバートレーニング (overtraining): トレーニングにより、長期的に筋力、持久力、回復力、パワー、パフォーマンス、リビドー等が低下している状態。怪我にも繋がる。
  • オーバーリーチング (overreaching): 短期間で回復するオーバートレーニング状態。意図的に引き起こすの機能的オーバーリーチング、オーバートレーニングの初期徴候として扱う非機能的オーバーリーチングがある。
  • ホメオスタシス (homeostatis): 恒常性維持機能。身体が安定した、一定の正常な状態を維持しようとする自動的な働きのこと。

Peaking Plan
Juggernautがクリスマスプレセントとして公開していた6ヶ月のピーキングサイクルの概念図。一例としてどうぞ。

ピーキングのプロセス

1. 疲労を出来るだけ無くす 

  • 疲労に最も起因するのは強度ではなく、ボリュームであると数々の研究結果の見解である。故に疲労対策として先ず最初にボリュームのテーパリングをする。期間に関してはリフターの筋力や重量級に応じてテーパリングの期間が決まって来るが、大体は大会の1から4週間前までにボリュームは低減してないといけない。
    ボリューム低減は疲労回復において最も重要なポイントである。トレーニング歴の長い強くて大きいリフターは、小柄のリフターに比べてより大きくホメオスタシスを乱すので疲労回復までに長い時間を要する。
  • ボリュームほどではないにしろ、強度も当然疲労に影響するし、自然に高重量を扱うことになるトレーニング歴の長い強くて大きいリフターはそのインパクトが尚の事大きい。故に強度もボリューム同様、テーパリングの対象となる。

2. フィットネスを維持、あわよくば上げる 

  • 前述の通り、ただ単に疲労を無くすだけがピーキングの目的なら、試合日から約3週間前から一切のトレーニングを除いて休息をとれば良い。しかし安易にそうすると可逆性の原理によりDetrainingが発生し、フィットネスも下がってしまう。以下の2点に気を付ければ、両方の目的が達成出来る
  •  強度はボリュームに比べ、フィットネスの維持に優れている。確かに全体的に強くなるのには大量のボリュームと高い強度が必要になってくるが、筋力の維持だけなら強度さえ高くすれば低ボリュームでも良い。減量中のRPTの考え方と似ている。だからテーパリングの優先順位は先ずボリュームで、その後に強度をいじる。
  •  機能的オーバーリーチングを利用してテーパリングの流れでフィットネスを増加させる事が出来る。普段なら扱わないトレーニングボリュームや強度を、数週間後に超回復すると見込み、テーパリングが開始する前に強行する。このボリュームと強度のテーパリングが始まる前にキツメのトレーニングを仕込む事で、試合直前にフィットネスが頂点(ピーク)に到達する事が出来る。

3. ビッグ3で最大限の力が発揮出来る様に、特異性の強化 

  • 特異性の原理に応じて特化したトレーニングをする事でパフォーマンスが更に上がる。一般的なパフォーマンスではなく、パワーリフティングの試合に向けてである。パワリフ大会では誰もお互いのオーバーヘッドプレスの重量を気にしてないし、スクワットの5レップマックスの記録も気にしてない。その日の全てが3種のパワーリフトのそれぞれの1RMのみだ。故にテーパリン中のトレーニングはこれらの全面的に配慮してなかればならない。
  •  テーパリング中の種目はほとんどがパワーリフトで構成されいるべきだ。試合で使うテクニックの仕上げとなるので、「試合でやる通りに」実際使うスタイルとセットアップを練習すべだ。スモウデッドで引く予定なら、この期間にコンベンショナルの練習をしているべきではない。ポーズベンチ(止め有り)、規定を満たした深さのスクワット、しっかりリセットしたデッドリフト等が特に重要だ。当然だが当日使うベルト、リストラップ、ニースリーブやニーラップ、チョークなども試合で使うかの如く練習すべきだ。初期のボリューム低減は、引き続き特異性強化が図れる様に、アクセサリー種目のカットから始まる。最後ら辺のトレーニングではビッグ3以外やってるべきはない。5/3/1のテーパリングは下記のリニア・テーパーに区分される。具体的には9週目からテーパリング開始される。

テーパリングの種類

テーパリングの大まかな流れは理解出来たと思う。筋力を追求するスポーツにおけるテーパリングは4つのどれかに分類出来る。

  1. ステップ・テーパー (slow taper)
    トレーニングにおいて一度だけボリュームと強度を低減し、それ以降は大会や試合まで同じボリュームと強度を維持する。
  2. リニア・テーパー (linear taper)
    この場合は段階的且つ直線型に(線型)ボリュームと強度を低減する形となり、例えば大会4週間目から毎週10%マイナスする。
  3. スロウ・ディケイ (slow decay)
    この場合もリニアと同じ様に段階的に低減するが、直線型にではない。スロウでは始めは少しずつ低減させて行くが、大会間近になって大幅に削るやり方である。
  4. ファスト・ディケイ (fast decay)
    この場合はスロウ・ディケイと同じ様な低減シーケンスをとるが、ペースが格段に早い。つまり、より短い期間で低減が生じる。

テーパリングに着目した研究は大体がエアロビックパフォーマンスを見ており、筋力系スポーツを見た研究が少ない。もっと研究が増えない限りより確かな事は言えないが、現時点では段階的に低減して行くテーパリングも一度に低減する場合と両方テーパリングの効果はあるらしい。

  •  一般的な強さは1RMを軸に語られるが、試合が近付くにつれ、「試合の練習」もしなければならない。3~5RMと全身全霊の1RMを遂行するのに要する生理学的、精神的、そして技術的な違いが存在する。試合の日に最善が尽くせるように、テーパリングにおいて1~3RM付近の重量を扱っておかないといけない。一般的なピーキングプログラムではこの期間にトリプルス、ダブルス、シングルスを盛り込んだ練習をする。基本的にこのまま仕上げまで持って行くが、変わるとしたらセット数くらいだ。
  •  特化という観点でからもう一つ、テーパリング中に渡りすべきな重要なポイントがあり、それは「動かすことを最大限に意識する」だ。トリプルス、ダブルス、シングルスを扱っている間、重量に関係なく、1RMに挑戦するかの如く、全力でバー動かす事を意識する事で特異性の強化のみならず、フィットネスの維持にも繋がる。更に試合当日の技術にも繋がるだけでなく、無駄なグラインドを少なくする事により力が温存出来る。

〆に

こうも長々と説明したが、実際にテーパリングをするのとしないとではどれだけの差があるのか?

2~8%パフォーマンス増加が期待出来る。

2~8%…

ま、その、テーパリングで奇跡が起きることを期待してはならない。日頃のトレーニング、しっかりした食事と睡眠、そしてモビリティワーク等の身体のメンテが全ての基礎なのだ。とは言え、ピーキングをした事ない人は1回くらいはやってみて経験として語れる分になるには良いことでは無いだろうか。

AristorleQuote
アリストテレスの名言
 


References:
ピリオダイゼーションと超回復 http://athletebody.jp/periodisation/​
(1) (2) ピリオダイゼーションの科学と実践:簡潔なレビュー http://www.nsca-japan.or.jp/22_member/database/backnumber/vol_18/18_6/18_6_18-29.pdf
PEAKING FOR POWERLIFTING http://www.jtsstrength.com/articles/2014/08/12/peaking-powerlifting/#sthash.YYA3Pixf.dpuf
UNDERSTANDING THE TAPER: REVIEWING RECENT RESEARCH http://thestrengthathlete.com/blog/2015/5/11/taperingrecentresearch
#207 超回復理論 vs. フィットネスー疲労理論 http://kawamorinaoki.jp/?p=175794028​
Pritchard H, et al. “Effects and Mechanisms of Tapering in Maximizing Muscular Strength”. Strength & Conditioning Journal Volume 37 Number 2. (2015) 72-83.
Incorporating One Week of Planned Overreaching into the Training Program of Weightlifters, NSCA JAPAN Volume 18, Number 5, pages 36-41 
Helms, E., Morgan, A., Valdez, A. (2015) The Muscle and Strength Training Pyramid v1.0
国際スポーツ医科学研究所. 新版 図解 スポーツコンディショニングの基礎理論 (Kindle版¥486!)


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